ショートストーリー №27 心の闇

 私の名前は、はぁこ。とっくに死んで実体の無い猫である。私の飼い主は、いつも妄想の中で私に話しかける。ある意味、生きていた頃より私達は仲が良いのかもしれない。    時として、妄想女の飼い主は私に言う。昔から、化け猫の話があるんだから、あいつを懲らしめて、私の恨みを晴らしてよ。・・・どうも、妄想女は勘違いをしているのだ。化け猫の誕生…
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ショートストーリー №26 機械至上主義

 「コンピューターでやっているから、間違いない筈ですが。」とか、「機械で読み取っているから、そちらの書き間違いじゃあありませんか?」とか、回答される事がたまたま続いた。  元はと言えば、人間が操作する事なのだから、確かに『機械は間違っていない』のかもしれない。そう、悪いのは人間なのだ。今の時代、機械に頼らずには生きて行きにくい世の…
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ショートストーリー №25 生かされし人

 瀬戸内寂聴さんは、93歳だそうですね。まだまだお元気ですねぇ。生きるお手本です。病気をされても、再びにこやかなお顔を見せて下さる。無病息災では無く、まさに「一病息災」が似合うお人ですね。    還暦を過ぎたら、「お釣りの人生」と言う人がいました。他人に迷惑をかけたくはないけれど、生きている限り誰かの手を借り、助けて貰うのが日常なん…
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ショートストーリー №24 タケノコご飯

 妄想女のパートナーが、知り合いから生のタケノコを頂いて来ました。時間が経つほど美味しさが損なわれるので、すぐに米のとぎ汁を使って茹でました。その後で、柔らかい部分はタケノコご飯にして、根元の方は少し濃いめの味付けで、土佐煮にしました。春の香りと、ほのかな独特のえぐみ、歯ごたえ。やはり、市販の茹でタケノコとは違うような気がしました。美味…
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ショートストーリー №23 複合施設

 少子化の影響で、地方ばかりでなく、都心部でも児童数が減少して廃校になる現象が増えているらしい。色々な試みをしている自治体もあるようだが、ある行政区では、保育園と老人施設を併設させて、とても良い相乗効果を得られているとか、テレビで見たけれど。  働かなくては生活するのが厳しい現実の中で、働きたくても、今働いていなければ子供を保育園…
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ショートストーリー №22 ハイヒール

 テレビで、ハイヒールを履いた綺麗な足を見ると、妄想女は必ず私に言うのだ。 「ねぇ、はぁこ。私だって、若い頃はあんな靴を履いていた事もあるのよ。」   幽霊猫の私は、妄想女の若い頃を知らない。生前、私が彼女の住まいに居ついた時には、彼女は充分に大人になっていた。そして、その頃の彼女は、慢性疾患が原因で、ハイヒールどころか、硬い革靴が…
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ショートストーリー №21 ゴールデンウイーク

 ゴールデンウイークの初日、東北新幹線が架線事故で長時間ストップして大混乱だったとか。出かける人は、大変だよねぇ・・・。  この何年・・・というか、この何十年も、ゴールデンウイークに出かけた事が無い。混雑が苦手というのも理由の一つ。ずっと働いて来て、土日祝日に関係無い仕事が多かったのも理由の一つ。帰るべき故郷が無いのも理由の一つ。…
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ショートストーリー №20 小さきもの

 赤ちゃんは、何故あんなに可愛いのだろう。人間の赤ん坊は勿論だが、犬でも猫でも、生まれたばかりの生命は、無条件に神々しく愛おしく感じられる。誰よりも弱い筈なのに、誰よりも庇護を必要としている存在の筈なのに、誰も敵う事の出来ない強さを感じさせるのだ。不思議な存在だと思う。  赤ちゃんの目は、何故あんなに澄んでいるのだろう。大人達のよ…
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ショートストーリー №19 三寒四温

 ベランダから見える山桜の樹が、すっかり葉桜に変わってしまった。いつもなら、もう春たけなわの頃なのに、今年はなかなか季節が進まない。上着無しで歩けたと思ったら、翌日にはまた手袋をつけて出かけるような日が繰り返される。場所によっては、満開の桜に雪が降り積もったりする。テレビのニュースで、映像として見る分には、確かに美しいし、そういう風景は…
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ショートストーリー №18 自慢のタネ

 男は、往々にして過去を自慢する。どんな企業に勤めていた、どんな仕事をしていた、どんな肩書だった、等々。あるいは、自分がいかに女性から人気があったとか、どんなに値打ちが高い品物を持っていたかとか。中には、まれに自慢のタネを現在にまで継続している人もいるが、失った過去が輝いていればいるほど、その輝きを自慢する人が多いように思う。  そん…
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ショートストーリー №17 ITオンチ

 「LINE、やってる?」とか「Facebookは、やらないの?」とか、聞かれる事が増えて来た。断り文句として、「SNSとか苦手だし、ガラケーだから・・・」と言って来たが、「ガラケーでも出来るよ」とか「スマホも慣れれば簡単だし、色々な機能もあるから便利だよ」とか言われると、返す言葉が無くなる。だから、黙っているのだ。  パソコンも…
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ショートストーリー №16  男女間の友情

 最近、気に入っている男がいる。もう1年以上の付き合いになるから、「最近」と言うのはおかしいかもしれないが。  彼は、くだけた話も真面目な話も、自然体でできる。話題も豊富だ。謙虚さも備えており、場の空気を読む事も心得ており、弱い立場の人をいたわり、気遣える優しさも持っている。男気もあり、男性としての魅力も充分に感じさせてくれる。要…
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ショートストーリー №15 ミーハー

 妄想女は、結構ミーハーだ。一見、生真面目そうに見えるらしく、芸能ネタなどの話をすると、意外だと言う人もいる。極端な場合は、冗談なんか言わない人だと思っていたと言う人間さえいる。どれだけお堅い人間と思われているのだろう。そんな時、妄想女は愛想良く笑顔を振りまきながら、腹の中では舌打ちしている。それが、幽霊猫の私には見えるのだ。・・・結構…
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ショートストーリー №14 断捨離

 年上の友人がそうしていると聞いて、数年前から、私も真似をして「断捨離」を始めた。引っ越す度に、整理は繰り返して来たつもりだったが、結構しまい込んでいる物が多くあって、我ながらあきれた。  まず、衣類の整理をした。衣替えと称して、何年も袖を通していない服を、勿体ないからと、何度出し入れした事だろう。あまり傷んでない物は、リサイクル…
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ショートストーリー №13 気ままな猫と女

 私の名前は、はぁこ。実体は無い。私の飼い主である妄想女は、時としてため息をつき、私に言う。「はぁこは良いわねぇ、気ままで・・・。」  私から見れば、妄想女もかなり気ままなものだ。自分では、協調性があるような事を言っているが、仕事でも家庭生活でも、日本人には珍しく、結構「YES・NO」をはっきり言う方だと思う。その上頑固と来ている…
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ショートストーリー №12 花の季節 

 ソメイヨシノがちらほら咲き始めた。花見の季節だ。咲き始めも、満開もきれいだが、個人的には散り際の桜が好きだ。風にハラハラと舞い、肩に降りかかる木の下を歩く時、何とも言えない気持ちになる。  花の命は短い。愛でられる事に、有頂天になってばかりいては、あっという間に時は過ぎて行ってしまう。だからと言って、堅実に生きようなんて思っては…
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ショートストーリー №11 駄メンズ

 かつて、年下の男と付き合った事がある。ひと回り以上も年下だった。その時は、甘えられる事も嬉しかった。わがままもきいてやれた。何度かは嘘も許せた。・・・それが良くなかったのかもしれない。その男にとって、それが当たり前の事になり、それが日常となってしまった。疲れを感じて、私は「終わり」を悟った。  別れは、簡単ではなかった。無言電話や嫌…
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ショートストーリー №10 三匹の子猫

 私の名前は、はぁこ。幽霊猫だ。まだ生きていた頃に、そうまだまだ若い頃に、私は三匹の子猫を産んだ。一匹は、私のパートナーにそっくりな、長毛のトラ猫のオスだった。もう一匹は、三毛猫のメスだった。そして、もう一匹は白黒の短毛で、昔の漫画にあった「のらくろ」のような見かけをしたオスだった。私も白黒模様ではあったが、毛の長さは普通だった。彼は、…
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ショートストーリー №9 マスコミ報道

 昨今、局の壁を気にせずに、民放各局が互いに協力し合うようになったからか、どのチャンネルを見てもワンパターンな報道が多いように思う。まぁ、それは報道に限った事では無いのかもしれないが・・・。  それぞれの企業において、中心となる世代が、30代から40代で、子供の頃から画一教育を受け、みんなと一緒が良い事だと育てられたからなのか。個性の…
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ショートストーリー №8 個性の強い男

 呑み屋で良く一緒になる男で、個性の強い男がいた。彼は、一言で言えば「善人」なのだと思う。本人は、酔うと口癖のように「俺は血の涙を流すような苦労をして来た」と言っていたが、ある程度の年齢で、ある程度の社会経験があれば、おそらくは誰もが味わった事のある「苦労」ではないかと思う。  仕事が毎日楽しくて楽しくて仕方ないという人の方が、ま…
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