ショートストーリー №20 小さきもの

画像 赤ちゃんは、何故あんなに可愛いのだろう。人間の赤ん坊は勿論だが、犬でも猫でも、生まれたばかりの生命は、無条件に神々しく愛おしく感じられる。誰よりも弱い筈なのに、誰よりも庇護を必要としている存在の筈なのに、誰も敵う事の出来ない強さを感じさせるのだ。不思議な存在だと思う。

 赤ちゃんの目は、何故あんなに澄んでいるのだろう。大人達のように、世の中の汚いものを見ていないから?すべてを見透かされているようで、怖くなる時がある。嘘も、どんな言い訳も通用しない。その前では、自分が失って来た沢山の大切なものと、否応なく向き合わされる。果たして、自分は恥ずかしくない生き方をして来ただろうかと。

 この世に生まれて、ほんの数か月の内に、赤ちゃんは母親の声を聞き分け、母親の匂いを嗅ぎ分け、母親の顔を見分けるようになる。どんな事があっても、この人だけは自分を守ってくれる人だと信じて。
 それなのに、悲しい事は、その信頼すら裏切る大人もいるのだ。そういう人は、どんな風にして大人になったのか。いつから疑う事を覚え、いつから嘘をつく事を覚えたのか。いつから「小さきもの」さえ守れなくなったのか。・・・あまりに悲しい。

 小さきものと向き合い、少しでも自分が浄化されたと思える時、やっぱり生きていて良かったと思う。そして、この小さきものを、自分の命に代えても、守って行きたいと思うのだ。・・・そうやって、誰もが「生命」をつないで行くのだろう。
 

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